国分寺市の日吉町にある小児科 よしむらこどもクリニック

よしむらこどもクリニック
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<予防接種の光と影(その2)>

 2000年頃から小児の疾病構造が変わってきました。私は1970年に医師になりましたが、その頃はこどもの数が多く、肺炎や髄膜炎などの重い感染症が多くみられました。町医者になってもうすぐ20年、最近5~6年間は肺炎や中耳炎などで他院に治療を依頼するような感染症が減ってきています。それは少子化の影響だけでなく、ワクチンが増えたおかげで重い感染症にかかるこどもが減ってきているようです。

 影響が大きいのはヒブワクチン(ヘモフィルス・インフルエンザb型の頭文字HとiとbをとってHib,ヒブと呼ぶ)、肺炎球菌ワクチン、麻しん・風しん混合ワクチンでしょう。
 
 今回はヒブワクチンの思い出です。
 2007年に承認されたヒブワクチンを製薬会社が輸入発売するにあたって会社の知人から「このワクチンは普及するでしょうか?」という質問を受けました。
 それまでこの細菌はインフルエンザ菌と呼ばれ、抗生剤が発達する以前は乳幼児肺炎の原因菌でしたが、抗生剤の普及とともに減少していました。1980年代に欧米でこの細菌感染症が増加し、ワクチンの作用について言われ出しましたが、日本ではまだ患者数は多くありませんでした。千葉大学の先生が調査研究をしていましたが、一般には関心がうすい状況でした。
 インフルエンザ菌と呼んでいましたので、冬に流行するインフルエンザと紛らわしいので、保護者にどう説明したらよいか難しく、私はヒブワクチンが十分普及するか確信できないと答えました。

 2008年、ヒブワクチンは任意接種として導入され、「ワクチン接種緊急促進事業」となり、あっという間に公費助成が広がり、2013年に定期接種となりました。その後の調査ではこの細菌による髄膜炎等の重症感染症は年を追うごとに激減しました。私は知人にヒブワクチンはさほど普及しないだろうと予想してしまったことを詫びました。

 忘れない子供がいます。ヒブワクチンが任意接種として世にでたばかりのとき、髄膜炎の疑いのある1歳1力月の女児を都立病院へ紹介しました。やがてヒブ菌による髄膜炎であることが判明しましたが、本人はこのワクチンを受けていませんでした。ワクチンを勧めておけばと悔やみましたが、幸い後遺症を残さず退院でき、今や中学生になり一安心しました。小児科医にとって髄膜炎は見逃してはならないと常にびくびくしている病気ですので忘れられない出来事でした。(平成31年4月)

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